最終回 THANK U 20
二人はお互いの存在が
かけがえのないものになっていった。
二人きりで過ごす時間が増え、
会えば夢中になって身体を重ねた。
「なぁ……ユノ……
このまま二人でどこかに逃げようか……」
「いいね……
とこがいいかなぁ……」
「どこか遠くがいいなぁ……
周りに誰もいない山ん中とか……」
「え~……誰もいない山の中?
大変じゃない?」
「ネットが繋がれは大丈夫だよ。
それに……僕がいるよ。」
「チャンミンと二人きり?」
「そうだよ。」
「そっか………
それならいいかなぁ……」
二人はそんな夢物語を語り合うようになった。
チャンミンはそんな二人の夢を夢物語で終わらせぬために、
必死に努力した。
文字通り血まみれになりながら努力を重ね、
いつしか時期組長候補と噂されるほどになった。
すべてはユノのためだった。
組長を追い落とし、
ユノを我が物にする……それがチャンミンの目標であり夢になった。
だがチャンミンの願いは脆くも崩れた。
ユノとは細心の注意を払い密会していたのだが、
二人の仲をある組員に知られてしまい密告されてしまった。
二人の仲は組長の知るところとなった。
当然………組長は激怒し、
ユノは監禁され組長に酷い折檻を受けた。
チャンミンは嫉妬に狂った組長の娘に、
あっけなく殺されてしまった。
もちろんチャンミン殺しの犯人には、
組の若い衆が名乗り出た。
チャンミンの葬儀の晩……
ユノは見張りの若い衆を誘惑して、
まんまと組長の元から逃げ出した。
そして……
組員が目を離した隙に、
棺の中からチャンミンの遺体を持ちだし、
そのままチャンミンの遺体と共に……どこかに消えてしまった。
山の家に青年が越してきてから、
何十年かの月日が経った。
美しかった青年は、
時の流れと共に凛とした老人になった。
ある日……山に一人暮らしの老人と連絡が取れなくなったと、
麓の村の青年団が老人の家を見に行くと、
老人は一人……息絶えていた。
老衰だった。
寒い時期だったので、
老人の遺体はたいして損傷することもなく、
美しいままだった。
老人の死後……
村の青年団が老人宅を片付けた際………
小さな冷凍庫の中から凍った人間の生首を発見した。
村の人々は、老人の深い業を知ったような気がした。
チャンミン……
これで……
ずっと……いつまでも……
一緒だよ……
終