苦いチョコレート

東方神起ミンホ。闇小説(ホラー&暴力系)多し。

白磁 4

その晩は……


二人は話がはずみ、


楽しく飲み、

遅くまで語らった。



チャンミンは、 

あたまの回転も早いらしく、

会話はウィットに富み、


面白く、


始終、

ユノを感心させたり、

笑わせたりした。



何より、

チャンミンの美しい顔を眺めながら飲む酒は、


とても旨かった。



ようするに……


ユノは、

チャンミンが


とても、気に入った。




目の前にいるチャンミンは、


普段、

客席から、


あの獣のような熱い視線を送る人物と、

同じ人物とは、


とても思えなかった。



今、目の前にいる青年は、


美しい顔で、はにかみ、

どこか思春期の少年のような眼差しを、


ユノに向ける。


そのくせ、


ユノのちょっとした仕草に、

頬を染め、


喉を鳴らし、


ユノに対する欲望を、

あらわにした。



その眼差しや、

欲望は、

何故か心地よく、


ユノを癒した。



それからも、


二人は、ステージがはねたあと、


たびたび会い、

酒を酌み交わした。



何回か会ううちに、

互いのことを、

少しづつ、語るようになった。



ユノは、昔、

少し芸能界にいた。



ダンサーとして活動し、

活躍し始めた頃、


ユノの活躍を妬んだダンサー仲間に、


男とベッドにいる写真を、

ネットに流出されてしまった。



いくら、

その手の嗜好の輩が、

多い世界とはいえ、


流出された写真は、

あまりに、

あからさますぎた。


この国では、

まだまだ、ゲイに対する偏見が根強い。



結果……


ユノは、志なかばで、

芸能界を追われてしまった。



以来、ユノは、

地下にもぐり、


barやclubや……


夜の世界で活躍している。



ここには、

ユノがゲイだからと、

責めるヤツは、

いなかった。



ユノは、表舞台からは、

退いたが、


今の世界で、

案外、伸び伸びと、

活動していた。



一方、

チャンミンは、

著名な若手陶芸家だった。



元々、実家が、

代々続く、古い窯元だった。



父親亡きあと、

その事業を継ぎ、


自身も陶芸家として、

数々の賞を受賞していた。



二人は、

お互いの世界のことに、

あまり詳しくなかった。



「陶芸家?

食器や、

壺なんかを、

作っているのか?」




ユノは、

チャンミンに聞いてみた。




「はい。

そうですね。

花瓶や、

茶器が得意です。」




「陶芸家が、

なんでこんなところに、

来たんだ?」




u-knowが踊っているbarは、

会員制だ。


簡単には、

入れない。




「チェ海運の社長に、

紹介していただきました。」




「シウォン?」



シウォンなら、

ユノも知っている。



金払いのいい、

リッチなイケメン社長だ。



ユノも、

何度か寝たことがある。




「はい。

ご存知ですか?

シウォン氏に、

一度、あなたのステージを、

観てみろと、

勧められました。」




「俺のステージを?」



「はい。

『冷たい土ばかり、

こねていても、

色気のある作品はできない。

暖かい生身の人間の色気を見てこい。』

そう、言われました。」



シウォンの言いそうなことだ。



暖かい生身の人間の色気か……




「陶器って……

土をこねて作るんだろ?

冷たいんだ?

テレビでしか、

見たこと無いや……」




チャンミンは、あの手で、

冷たい土をこねるんだな……



あの指に触られたら、

やっぱり、

ひんやりと冷たいのだろうか……


ユノは思った。




「よかったら、

一度、うちの工房に、

遊びに来ませんか?」



「え?」



「陶芸体験ができますよ。

椀や皿を作ったり、

絵付けをしたり、

いろいろできます。」




「面白そうだな。

いいのか?」




「はい。

ぜひ、いらしてください。」




こうして、

ユノは、チャンミンの工房に、

遊びに行くことになった。