THANK U 13
「こちらの捜査によりますと、
ほぼ間違いなく同一人物です。
チョン・ユンホ。
指定暴力団東方組の若頭です。」
刑事は写真をしまいながら俺にそう言った。
「暴力団の若頭?
ユノさんが?
まさか……」
俺は刑事に聞き返した。
「今……指紋を確認ていますが、まず本人で間違いないです。
ここに住んでいたのは東方組の若頭チョン・ユンホです。」
「そんな………」
その時……
「課長!
すみません!
ちょっと来てください!」
ユノさんのプライベートルームの方から、
若い男が顔を出して刑事を呼んだ。
ずいぶん慌てている。
「失礼………」
刑事は俺に断ると、ユノさんのプライベートルームの中に入っていった。
ユノさんがいたのだろうか……
まさか……死んで……
いやそんなまさか………
俺は気になって……刑事に気がつかれないように……そっと刑事のあとに続いた。
ユノさんのプライベートルームの入り口に近寄ると、
こっそりと中を覗いた。
「っ……………」
なんだ……あれは………
銀色の冷凍庫の扉が開いていた。
警察の人が開けたのだろうか………
俺は……冷凍庫の中に……あり得ない物を見た。
人だ………
人間の……死体だ……
それも多分……一体じゃない……
大きな冷凍庫だ。
その冷凍庫の中に人の身体が入っている。
立ったままの形で入っているので、まるでマネキンみたいだ。
ただ……首が無い。
きちんと服も……それも…スーツを着ているので、首の無いマネキンみたいだ。
問題はそのマネキンの足元だ。
人間の身体のパーツがある。
手……
足……
それにあれは……首だろうか……髪の毛らしきものが見える。
それらの人間のパーツらしきものが、
一つずつきちんと……ビニール袋の中に入って……マネキンの身体の足元に積んである。
立っている死体には血は一つもついていない。
だが……足元にあるビニール袋は血だらけだ。
「こいつは……あれだな……」
刑事は手袋をした指で、マネキンのスーツの襟元を見ている。
「この遺体は……たぶんシム・チャンミンだ。
こんなところに隠していたんだな。」
「っ………」
やっぱり……死体なんだ……
俺は目の前がスッ……と暗くなり、
思わず膝をついた。
その音に気がつき刑事が振り返った拍子に……
刑事の手がマネキンのような遺体に引っ掛かり……
マネキンは前の方に向かって……グラッと倒れてきた。
「おわ!!」
刑事がマネキンを支えようとしたが、支えきれず、
マネキンは俺のいる方に向かって、ドウッと倒れた。
俺のいる位置から、マネキンの首の真っ赤な切り口が見えた。
俺は思わず悲鳴をあげた。