THANK U 1
家のそばに小さなカフェがオープンした。
コーヒーがメインで、
ケーキや焼菓子を置いているらしい。
店の前を通る度にコーヒーの良い匂いに癒され、入ってみたいと思うのだが、
いかんせん店構えがファンシー過ぎて、
男の俺にはちょっと敷居が高かった。
営業時間は23時までとけっこう遅くまでやっているのだが、
いつみても店内は女性でいっぱいで、
やはり男1人では入りずらかった。
ある日の仕事の帰り道……
その日は夜中に台風が直撃するとかで、
すでに大雨が降っていたため、
通りに人影はほとんどなかった。
俺も台風の暴風雨に巻き込まれないように、
早く家に帰ろうと、
アパートに向かって足早に歩いていた。
あのカフェの前を通ると、
まだ灯りが点いていた。
台風のため、
ほとんどの店が早じまいしているのに、
ここは閉めないのだろうか。
悪天候のせいか、
店内に人影がない。
今なら、コーヒーの一杯くらい飲めるかな。
俺は思いきってファンシーな扉を開けてみた。
扉に手を掛け手前に引くと、
チリンチリンと、
かわいらしい音が響いた。
「いらっしゃいませ~」
店の中にいた店員は、
胸と左側のポケットに苺の刺繍がしてあり、
白いフリルがたくさんついた、
なんともファンシーなエプロンを着けた、
恐ろしくイケメンな大男だった。