THANK U 2
「いらっしゃいませ。
好きな席におかけください。」
ふりふりエプロンのイケメンは、
俺を席に案内してくれた。
「雨が酷いですね。
どうぞお使いください。」
ふりふりエプロンのイケメンはそう言うと、
俺に乾いたタオルを差し出した。
差し出されたタオルはピンク色で端にレースが施され、
ウサギの刺繍がしてあるなんともファンシーなタオルだった。
「あ、ありがとうございます。」
俺はそのタオルを受けとると、
雨に濡れたスーツや鞄を拭いた。
タオルからは花のようなよい香りがした。
「何になさいますか?」
俺はメニューを見た。
色んな種類のコーヒーが並んでいる。
裏面はケーキだ。
コーヒーは好きだが、
豆の種類までは詳しくない。
「えっと……
今日のおすすめのブレンドをお願いします。」
「はい。
ホットになりますが、よろしいですか?」
「はい。」
「少々お待ちください。」
ふりふりエプロンのイケメンは、カウンターの奥に下がっていった。
すくにコーヒーのよい香りが漂ってきた。
俺はコーヒーを待つ間、改めて店の中を見回した。
外観は何度も見ていたが、店内を見るのは初めてだった。
店の中は白と木目で統一され、落ち着いた色合いの作りだった。
そこかしこに花や動物の小物が飾ってある。
ウサギ、
鳥、
猫、
犬、
いかにも女の子が好みそうな小物だ。
その小物の周りを、リボンやレースで飾り付けしてある。
小物はWeb販売しているらしい。
URLの案内が貼ってある。
「お待たせしました。」
「ありがとうございます。」
コーヒーが運ばれてきた。
いい香りだ。
味も好みだ。
癖がなくマイルドだった。
店内はk-popが流れ、
ほどよい温度だったが、
外はいつのまにか暴風雨だった。
雨が窓ガラスにバチバチと叩きつけられ、
風で窓枠がガタガタと揺れている。
窓から外を見ると、
豪雨のせいで辺りが真っ白になってみえる。
「お客様……失礼ですが、家はお近くですか?」
ふりふりエプロンのイケメンが俺に聞いた。
「はい、すぐそばです。」
「そうですか。
台風の接近が早まったみたいで、
今ちょうどこの辺りを通過しているようです。」
「え?
そうなんですか?」
俺は携帯を出し、
天気予報を確認した。
「ほんとだ。
ちょうど真上だ。」
「よろしければ雨風が収まるまで、
ゆっくりしていってください。」
ふりふりエプロンのイケメンは、「サービスです。」と焼菓子を乗せたお皿を、
俺のテーブルに置いた。
「いいんですか?
ご迷惑じゃないですか?
あなたが帰れなくなっちゃいませんか?」
ふりふりエプロンのイケメンは「大丈夫?」と笑った。
「俺、この店の奥に住んでいるんです。
だから大丈夫です。
他にお客様もいませんし。
天気が落ちつくまでゆっくりしていってください。」
「ありがとうございます。」
これが俺チェ・ミンホと、
ふりふりエプロンのイケメン、チョン・ユンホとの出会いだった。