THANK U 3
その夜は、他に客もいなかったので、
俺は店員さんとずっと話をしながら、
台風が過ぎ去るのを待った。
話しながらお互いに簡単な自己紹介した。
「チェ・ミノです。
市役所に勤めています。
この裏のアパートに住んでいるんです。」
俺は店員さんに名刺を差し出した。
「高齢者福祉課ですか~
大変でしょ~」
店員さんは、店員さんではなく、
この店のオーナーだった。
「チョン・ユンホていいます。
ユノって呼んでください。」
従業員はいなくて、一人でこの店をやっているそうだ。
「小さな店ですしね。
俺一人でやっているんです。
ほんとは俺みたいなおっさんが接客するより、
かわいい女の子にでもバイトをお願いすればいいんでしょうけど……」
「そんな余裕はなくてね……」とユノさんは笑った。
「夜遅くまで営業していますよね?
大変じゃないですか?」
俺はユノさんに聞いてみた。
だって、ここ11時open、
23時closeだから、
12時間も一人で店番していることになる。
「どうせ俺……独り身なんで暇なんですよ。
だから大丈夫です。」
「トイレが困るんですけどね。
お客さんのいない時にササッと行かなくちやいけなくて~」
と、恥ずかしそうに笑うユノさんの綺麗な笑顔に、
俺は久しぶりに胸の奥がザワザワしたが、
いくら綺麗でも相手は男だ。
俺は小さく騒ぐ胸の音に無理矢理蓋をした。
やがて台風は通りすぎ、
雨風が収まったので、
俺はユノさんに礼を言うとアパートに帰った。
それ以来、
仕事の帰りにはこのカフェにより、
ユノさんのいれてくれた珈琲を飲み、
ユノさんと話をしてから帰るのが、
俺の日課になった。