THANK U 4
俺は仕事の帰りに毎日ユノさんのカフェに通うようになった。
小さなカフェなので、
平日でも、
客席は女の子で埋まっているのことが多い。
俺は邪魔にならないようにカウンターのスツールに座った。
カウンターには、本来スツールは無かったのだが、
俺が行った時、
たまたま満席で座るところがなかった時があり、
仕方なく帰ろうとした俺に、
ユノさんが、奥から自分用のスツールを出してきてくれた。
それ以来、
そのスツールは俺専用の指定席になった。
カウンターに座り、
珈琲の良い香りに包まれながら、
ユノさんがいれてくれた美味しい珈琲を飲み、
珈琲を入れている美しいユノさんを眺めながら、
ユノさんの邪魔にならない程度に話をしていると、
1日の疲れやストレスが、スーっと消えていくようだった。
ユノさんのカフェで過ごす時間は、俺の中でなくてはならないものになっていった。
ある日………
いつものように仕事帰りに駅からカフェに向かって歩いていると、
カフェより一つ手前の路地に見慣れない車を見かけた。
窓も車体も黒塗りで、いかにも怪しげな車だ。
助手席の窓が少し開いていて、
車の中の男が煙草を吸っていた。
窓の隙間から、
これまたいかにもその筋の方々といった男達が乗っているのが見えた。
この辺は、ただの住宅街だ。
特に高級住宅街でもなければ、
治安が悪い地域というわけでもない。
ごくごく普通の住宅街だ。
その住宅街のど真ん中に停まっている黒塗りの怪しげな車は、
街に似合わず不穏な空気をかもしだしていた。
だが……たかが車一台だ。
俺はたいして気にせず、
早くユノさんに会いたくて、
ユノさんのカフェに急いだ。
だが……次の日にも……
前日とは違う車だったが、
怪しげな男達を乗せた車が、
ユノさんのカフェから少し離れた場所に止まっていた。