終 白磁29
その日は、
ユノは夜のステージがあるからと、
昼前には、帰っていった。
チャンミンは、
あとで必ず観に行くからと約束し、
帰るユノに、キスをした。
チャンミンとテミンは、
ユノの車を二人で見送った。
「ユノヒョン、かわいい。
チャンミニヒョンがキスしたら、
うっとりしちゃって‥‥」
「お前‥‥
もう、ユノに手を出すな。」
チャンミンは、吐き捨てるように言うと、
窯の方へ向かった。
テミンも、あとを追いかけた。
今日は、工房は休みだ。
骨を焼く日は、
工房が休みの日にしている。
チャンミンは、
窯の前に来ると、
扉を開ける準備をした。
「なに?
本気になったの?」
テミンは、チャンミンに聞いた。
「ああ‥‥
だからもう‥‥ユノにかまうな。」
「ふ~ん‥‥
解った。
残念‥‥
ユノヒョン、気に入ってたのに‥‥
責めてるのに、
喘ぎ声が、超エロいんだ。」
扉を開けると、熱気と、
独特の臭いが、
ムアっと広がった。
「あれ?
一緒に焼かなかったの?」
テミンは、畳まれた自分の服と靴を見つけた。
服の上には、
ネックレスが乗っている。
「一緒に入れるのを、忘れてしまったんだ。
後で焼くよ。」
証拠隠滅のために、
テミンが、その日に身に付けていたものは、
全て焼いていた。
「ユノヒョンとやりすぎて、
ボケっとしてたんじゃないの?」
テミンは、ニヤニヤしながら、
ネックレスを指にかけ、
チャリチャリと回した。
チャンミンは、テミンの言葉を無視して、
窯の中身を、台ごと取り出した。
台に乗せられた真っ白い骨が、
ザラザラと音をたてた。
それは‥‥
馬の骨ではない。
少し小柄だが、
それは、明らかに人間の骨だった。
台の上に、
人間が横たわっているような形で、
骨が並んでいる。
頭から、足先まで、
全ての骨が綺麗に揃っている。
チャンミンは、頭蓋骨を手に取った。
「どう?」
テミンは、チャンミンに聞いた。
「まあ‥‥いい骨だ。
白いし、綺麗だ。」
「若い子だったしね。
身体は柔らかくて、
いい具合だったんだけど、
すごい声でさ。」
テミンは、
骨をしまう木箱を出した。
「やっぱり、
ユノヒョンみたいな、
エロい声がいいな。
俺もユノヒョンに挿れてみたい。」
「ダメだぞ。
ユノは、僕のだ。」
「ちぇ‥‥
チャンミニヒョンのためだ。
こっちで我慢するか~」
テミンは、
白い骨を一本とると、チュッとキスをした。
「少し、間を開けろ。
感づかれるぞ。」
「大丈夫。
そんなヘマはしない。」
テミンは、ニヤっと笑った。
悪魔のような微笑みだと、
チャンミンは思った。
テミンは、SEXをすると、
相手を殺さずにはいられない。
美しい顔と身体で、
女を誘っては、
ベッドで首を絞めて、殺してしまう。
相手に突き入れながら、
首を締めるのが好きだ。
相手の断末魔にも似た震えを身体で感じるのが、
たまらなく好きだった。
人間の骨が欲しかったチャンミンは、
たまたま遺体をもて余していたテミンと知り合い、
遺体を引き取り、
テミンも引き取り、
自分の工房で、働かせた。
そして、
テミンが持ち込んだ遺体を、
窯で焼いた。
高温になる窯は、
全てを焼き付くし、
骨だけを綺麗に残してくれた。
チャンミンはテミンのおかげで、
自分の手は汚さず、
人間の、
良質の骨を手に入れることができた。
「ユノヒョンの骨は、
どんな色かな‥‥」
手にした骨をしまいながら、
テミンが、ぼそりと呟いた。
「ユノは、殺すな。
ユノに何かしたら、
僕が‥‥お前を、焼いてしまうよ。」
「解ってるよ。」
ユノの骨‥‥
あの甘く柔らかな身体の中に隠れている‥‥
乳白色の骨‥‥
その骨を混ぜて焼いた磁器は、
さぞや美しいだろう‥‥
自分は、いつまでこの誘惑に、
耐えられるだろうか‥‥
チャンミンの背中をゾクリと、
震えが走った。
終