苦いチョコレート

東方神起ミンホ。闇小説(ホラー&暴力系)多し。

THANK U 18




最初……チャンミンはユノのことも警戒していたが……


同じような年齢ということもあり、

二人はすぐに打ち解けた。



親交が深まるにつれ、

ユノの複雑な事情をチャンミンは知ることになる。




「男に……妾になれだなんて……」




チャンミンは呟いたが、




「この世界にはよくあることさ……

女性みたいに妊娠するわけじゃないから跡目争いには無縁だし……

だから、姐さん達も目をつぶる。」




ユノはわざと明るく話した。


嫌悪されるのには慣れているが、同情されるのは嫌だった。




「男相手なんて……スポーツみたいなもんさ……

ムラムラっとしたらすぐにその場でやれる。

姐さん達相手みたいに気をつかわない。

だから、俺みたいのが側に置かれるのさ……」




「……………ユノはそれでいいの?」




チャンミンの質問にユノは詰まった。



今までユノの気持ちを聞いてくれた人などいなかった。



だから、

自分がどう感じるかなど、あえて考えないようにしてきた。


生きるためにはしかたがなかった。


必死でやってきた。




「いいかどうかなんて……考えたことないよ。

言ったろ?

スポーツだよ。」




チャンミンの憐れみを含んだ視線が嫌だった。



ユノはチャンミンを押し倒すと、

その身体の上に乗り上げた。




チャンミンだって男だ。


チャンミンだって他の男達と変わらないのだと解らせてやりたかった。




「チャンミンもしてみる?

俺が相手ならお嬢も気にしないよ。」




嘘だった。




組長の1人娘は、気性が激しく恐ろしく嫉妬深い女性だったし、



その親の組長は、ユノが他の男に色目を使うのを決して許さなかった。




「どいてくれ……

僕はそういうんじゃない。」



チャンミンはユノを押し退けようとしたが、


その股間はあきらかに興奮していた。




「こんなにしてそんなこと言ったって……

全然説得力無いよ。」




ユノはチャンミンの興奮した股間に身を伏せた。

THANK U 17



side Y



幼い頃……親の借金のカタにヤクザに売られた。


顔立ちが綺麗だからと、直ぐ様幼児を好む変態の巣窟に沈められた。



何人もの仲間がプレイの最中に亡くなり消えていった。


あこで生き延びれたのは奇跡だった。


年を重ね十代後半になると、金持ち相手の娼館に移動させられた。



そこでヤクザの幹部に気に入られ、

今の組に入った。



俺は組長に気に入られ、すぐさま男妾にされた。



しかしそれから、血の滲むような努力を重ね、


若頭にまで登り詰めた。



俺が若頭になったころ、

組長の一人娘が結婚した。



相手は大学で知り合った男だった。



男は女の子が好みそうな、お伽噺の王子様のような風貌をしていた。




茶色い大きな目が印象的な

美しい男だった。




ヤクザの世界など似つかわしくないような、全うな世界の人間だった。



大方……この男も借金のカタか何かに、組長の娘婿として買われてきたんだろう。



結婚式が行われた教会で、青い顔をして今にも倒れそうな男を見て、俺はそう思った。




組長の娘は一人娘だ。



正式に結婚したからには、この王子様のような男も組と無縁ではいられない。



俺はこの男の教育係に任命された。



男の名前はチャンミンといった。

THANK U 16




「おはようございます。」




「あら、ユノちゃん。

おはよう。」




「これお願いします。

いい天気ですね。」




「ほんとにね~

あ、ユノちゃん、夕べ杏を煮たのよ。

持ってって。」




「うわ、うまそう。

ありがとうございます。」




光州市郊外の山の中……



秘境のような山あいの小さな村の、さらに一番奥に建っていた小さな廃屋に、


若い男が越してきた。




男は軽トラックにわずかな家財を積んで越してくると、

一人で廃屋を修理しはじめ、

あっという間に人が住める状態にした。



幸い電気は送電されていたし、


水は近くに小さな川があったので、


ライフラインには困らなかった。




ある日突然廃屋に灯りがともったので


村の人々は驚いた。




驚いた村の人々が恐る恐る様子を見に行くと、


びっくりするくらい綺麗な男が、

一人で作業していた。



男はユノと名乗った。


明るく気さくな男で、村人はみんなユノのことが好きになった。




村人は突然現れた男の素性に興味津々だったが、


ユノはあまり多くは語らず、花のように笑うだけだった。




「何か事情があるんだろうなぁ~」




「そりゃそうでしょ。

あんなイケメンのお兄ちゃん。

こんな山ん中に1人でさ……」




「どっかから……逃げてきたのかな……」




「変な奴らが追いかけてこないといいねぇ……」




「そしたらさ……みんなで庇ってあげようよ。」




「そうだなぁ~」




村人はみんな……なんとなくユノの事情を察し、


そっと見守ってくれた。





「は~……ただいま~」




ユノは村で購入したわずかな食料をテーブルの上に置いた。




「チャンミン、ただいま。

今日は杏をもらったよ。

おいしそうだ。」




ユノは誰もいない部屋の中で、一人言のように話し始めた。



村での出来事をまるで誰かに聞かせるように話している。



掃除をし、

家事をし、

家の修復を続け……

あっという間に1日が終わる。



落ちついたら、

庭に小さな畑を作ろうと思っている。



ちょっとした野菜くらいなら、自分で育ててみたい。




陽がくれて……

簡単な夕食を一人で食べ、

湯を浴び、寝間着に着替えた。



「チャンミン……もう寝ようか………」




ユノは寝室にある小さなクローゼットの扉の前に立つと……そう言った。



クローゼットの扉は上下に別れていて、

上の扉には鍵が付いている。



ユノは引き出しから小さな鍵を取り出すと、

上の扉の鍵穴に差し込んだ。



鍵はカチャリと音をたて外れた。



ユノはゆっくりと扉を開いた。




扉はキィ……と渇いた音をたて左右に開いた。




扉の中には、銀色の小さな冷凍庫があった。



卓上サイズの冷凍庫だ。



「チャンミン………」



ユノは愛しそうに呟くと、

冷凍庫の扉を開いた。



中には……まるで作り物のような……

人間の生首が入っていた。



生首は凍っているのだろう。



はだも唇も真っ白で……室内の灯りに照らされ……青白く光っている。



閉じられた瞼は長い睫毛で縁取られ、

その瞼は今にも開きそうだった。



髪の毛は明るいブラウンで少し霜が付いている。



ユノは生首を大事そうに取り出すと、

胸に抱え、髪の毛についた霜を払った。




「チャンミン……

今日も良い日だったよ。」




そう言うと……生首の冷たい唇にそっと口付けた。




しばらく大丈夫そうに抱えていたが、

あまり長く抱えていると、生首が溶け出してしまう。



「チャンミン……

お休み……

また、明日な……」




ユノは名残惜しそうに生首を冷凍庫に戻すと、

また扉を閉め鍵をかけた。