苦いチョコレート

東方神起ミンホ。闇小説(ホラー&暴力系)多し。

終 狂気と愛の境目30

「ああ……

開けちゃったんですか……」



「チャン…ミン……」



ユノは、背後を振り返った。



真っ暗な廊下を、


チャンミンが、

こちらに向かって、

歩いて来る。



チャンミンは、

ユノの側まで来ると、


床に転がっていた瓶を、

拾い上げ、


入っていた箱に、

積めてしまった。



「こんな汚らわしい物……

僕が処分します。

ユノが見る必要はなかった。

もう、

気にしないでください。」



チャンミンは、

目を伏せたまま、

静かに、

そう言った。



「チャンミン……

それ……

それは……なんだ?」



「これは、

警告です。」



「警告?」



「はい。」と、

チャンミンは、頷いた。



「ユノ……

今日、ソウル警察に、

行ったでしょ?」



「あ………」



ユノは、

手で口元を押さえた。



「何か気になることがあれば、

僕に聞いてくださいと、

言ったでしょ?

どうして、

言うことが聞けなかったんです。

困った人だ。」



チャンミンは、

仕方ないなという感じで、

小さく笑った。



「ユノが、

刑事に見せた名刺のせいで、

警察が動いたようです。

それで、彼が怒ってしまって……

取り成すのに、大変でした。」



「彼……?」



彼って……

誰だ……?



「この前、刑事といって、

連れてきた男です。」




「イ・スヒョク刑事?」



ユノは、チャンミンに聞いた。




「そうです。

もう、知ってるでしょうが、

彼は、刑事ではありません。」



チャンミンは、

下を向き、

箱を見つめている。




「彼は、何者なんだ?」




ユノは、チャンミンに、

問いかけた。




「彼は……

裏社会の

始末屋です。」




「始末屋?」



「はい。

文字通り……

金さえ積めば、

なんでも始末してくれます。

なんでも……」



なんでも……



ユノは、ヒクリと、

息を飲んだ。



息が……苦しい……



「社長も、

マネヒョンも、

警察には訴えないと言った。

捕まるかどうか解らないし、

事件の詳細が世間にバレたら、

あなたのためにならないと……」



知ってる……


そう言ってた。


俺の不注意が招いた事だ。



仕方がない……




「そんなの……

おかしいでしょ?」




チャンミンは、

顔を上げ、

ユノを見た。




「あなたを、

あんなに傷つけたヤツラが、

何も罰っせられず、

のうのうと生きているなんて、

おかしい……

そんなの……

絶対……

おかしい……」



チャンミンは、

まるで、

自分に言い聞かせるように、

ゆっくりと言葉にした。




「チャン…ミン」



チャンミンは、

箱の側を離れ、

再び、

ユノの側に戻ってきた。


ユノの隣に座りこみ、

ユノの手を握った。




「だから……

僕は、彼に頼みました。

警察に代わって、

犯人を罰して欲しいと……

頼みました。」



「殺し…たのか……」



ユノは、震える唇で、

チャンミンに聞いた。



「殺して欲しいとは、

依頼していません。

罰して欲しいと、

頼みました。

でも、彼は……

犯人達を……

処刑してくれたそうです。」



「そっ……」



ユノの目に、

涙が盛り上がった。



「でも……

あなたが、

ソウル警察に行き、

彼の秘密を暴こうとした。」



チャンミンは、

ユノの手を撫でた。




「結果……

彼を怒らせてしまった。

あの瓶は、

僕らへの警告です。

これ以上、

余計なことは、

するな…と……」



あの瓶……


プラスチックの……


おぞましい……


恐ろしい…警告……




「彼は、暫く、

韓国を離れるそうです。

逃走資金が必要だ…と、

倍の代金を請求されました。」




「また、頑張って働かなきゃ……」と、

チャンミンは、

何故か、

嬉しそうに、笑った。



「チャンミン……」



ユノは、ついに、

ハラハラと涙をこぼした。



チャンミンは、

ユノの涙を見て、

慌てた。



「ユノ。

大丈夫です。

もう、何も、

心配することは、ありません。

すべて終わりました。

あなたを傷つけたヤツラは、

もういません。

もう、誰も、

あなたを、傷つけません。

僕があなたを、

全身全霊で守ります。

二人で東方神起を、

続けましょう。」



チャンミンは、

涙を流し続けるユノを、

ギュっと、

抱きしめた。



大事そうに、

大事そうに、

抱きしめた。




狂っている……




ユノは、

そう、思った。



チャンミンは、

狂っている。



ユノのために、

4人もの人間を、

殺した…と……

言っているのだ。



狂っている。



「これからも、

二人で東方神起でいましょう。」



チャンミンは、

ユノに口づけた。



チャンミンの情熱的な口づけを受けながら、


ユノは、

狂っているのは、

自分かもしれないと、

思った。



嬉しい……と、


そう思った。


チャンミンの気持ちが……


行為が……


嬉しいと思ってしまう自分が、

一番、

狂っているのかもしれない。



ユノは、そう思った。



だんだん深くなるチャンミンの口づけを、

愛撫を、

受け止めながら、



ユノは、

そっと……


目を閉じた。