白磁 2
ショーの幕があがった。
u-knowは、
妖艶に躍り、歌い、
観客を魅了した。
今夜も、
一番前の、
真ん中の席に、
いつもの、
あの男が座っていた。
いつものように、
熱い視線で、
u-knowを、
u-knowだけを見ている。
他のダンサーには、
目もくれない。
ただ、ひたすら……
u-knowだけを、
見つめていた。
男の視線は、
ユノにとって、
何故だか、
とても、心地よかった。
まるで、
肌触りのよい、
熱の塊に包まれているような、
そんな感じがした。
こんな……
無粋な衣装など脱ぎ捨て、
男の視線を素肌に受け止めたい。
ユノは、そう思った。
そのせいか……
u-knowは、
衣装をはだけるさせる回数が増え、
ショーは、
妖艶に、
エロティックに、
なっていった。
観客は、息をのみ、
ますますu-knowの虜になった。
いつしか、
ユノは、男の視線を、
待ちわびるようになった。
しかし、
さすがに、
男も、毎回来るわけではない。
たまに、男が来ない日があると、
ユノは、
物足りなさを感じる程だった。
その週も、
金曜日も土曜日も、
客席に男の姿は、
なかった。
金曜日、土曜日と、
両日、男が来ないのは、
珍しかった。
今までは、
両日は来なくても、
必ず、どちらかには来ていた。
ユノは、ちょっとガッカリした。
しかし、
次の週の、
金曜日には、
男は来ていて、
いつもの席に座り、
いつものようにu-knowを見ていた。
その日のステージは、
ユノは、男のために、
心をこめて踊った。
ステージがはねると、
マネージャーが、
ユノの控え室に来た。
「ユノ。
例のイケメンの客が、
お前と話したいって、
待ってるぞ。
どうする?」
珍しい。
u-know目当てで通っている客は、
他にも何人もいるが、
マネージャーが
こんなふうに、
取り次ぐことは、
まずない。
よほど、
大金を掴まされたのだろう。
「解った。
行くよ。」
ユノは、
ちょっと考え、
舞台化粧を全て落とすと、
スッピンで、
ラフな格好に着替え、
男のもとへ向かった。