白磁 5
チャンミンの工房は、
ソウル郊外の、
人里離れた寂しい場所にあった。
barで飲みながら、
チャンミンに説明された。
「何も無い田舎なんですよ。」
「俺の実家も田舎だよ。」
「よければ2、3日泊まっていってください。
古い家だけど、
部屋だけは、たくさんあるんですよ。
旅行のつもりで、
ゆっくり来てください。」
「いいのか?
ありがとう。」
翌月、
何日かまとめて仕事のOFFをもらった。
ユノは、教えられた住所を打ち込み、
ナビを便りに、
車でチャンミンの工房に向かった。
朝早くには出たが、
途中事故渋滞にはまってしまい、
着いたのは、
昼過ぎだった。
車の中から、
何度か、
チャンミンにラインしていたので、
着いた時には、
工房の前で、
チャンミンが待ち構えてくれていた。
工房の入り口には、
『シム窯工房』という木の大きな看板が、
かかっていた。
「ユノ!」
「チャンミン。
すまない。
遅くなっちゃって……」
「いえ、渋滞大変でしたね。
遠くまで、ありがとうございます。
疲れたでしょう?
腹は減っていませんか?
昼飯は?」
「実はまだなんだ。
腹ペコだ。」
ユノは、おどけたふりをして、
腹を押さえた。
チャンミンは、ふふ…っと笑った。
「ご馳走をたくさん用意しました。
一緒に食べましょう。」
ユノは、中に案内された。
シム窯工房はとても広かった。
重厚な木の門をくぐると、
右手に作業棟があり、
左手に家屋があった。
家屋は、チャンミンの言ったとおり、
木造の古い建家だったが、
パッと見、
何部屋あるのか解らないくらい、
大きな家だった。
ユノは、その家屋の中に、
案内された。
「あとで、
工房も案内しますね。
とりあえず、
腹ごしらえしましょう。」
チャンミンに、
案内され、
テーブルについた。
たらふく昼食をご馳走になり、
一休みすると、
工房の方に、
案内された。
何十人もの職人が、
焼き物を作っていた。
土をこねている者。
ろくろを回し、
形を成型している者。
絵付けをしている者。
皆、チャンミンの姿を認めると、
笑顔を向け、
頭を下げ、
挨拶する。
チャンミンも、
そんな職人達に話しかけ、
屈託無い、
かわいい笑顔を向けている。
「皆に好かれているんだな。」
「そうですか?」
「うん。」
ユノは、胸の奥が、
ザワザワした。
まるで、職人さん達に、
やきもちを、
やいているみたいだ。
「皆、いい人達なんです。
父の代から働いている人達ばかりで……
みんな、俺が子供の頃から、
ここにいる人達ばかりです。」
「そうなんだ……」
一通り工房の中を見て回り、
外に出た。
「お父上は、
病気で亡くなったのか?」
ユノは、
ふと、気になり、
聞いてみた。
これだけの工房を作りあげた人だ、
さぞ有名な陶芸家だったのではないだろうか……
「いえ……
自殺したんです。」
自殺……?
ユノが、
「すまない……」と、
呟くと、
チャンミンは、
「いいえ……」
と返した。