狂気と愛の境目16
事件から何日か経ったある日……
家にいたユノのもとに、
チャンミンが、ある男を連れてきた。
男は、ユノに、
名刺を渡した。
名刺には、
『ソウル警察
犯罪一課
イ・スヒョク』
と、明記してあった。
「刑事さん……ですか?」
「はい。
チョンさんの暴行事件を
、
担当することに、
なりました。
よろしくお願いします。」
「はあ……」
ユノは、腑に落ちなかった。
事務所は、警察には訴えないと、
言っていた。
それに、マネージャーは?
「早速ですが、
事件のことで、
少々お聞きしたいことがあります。
よろしいですか?」
「あの……
チャンミン、
マネージャーは?」
「マネヒョンは、
別の仕事が入ってどうしても、
来れないそうです。
代わりに同席してくれと、頼まれました。」
「そうなんだ。
警察には、訴え無いって聞いてたんだけど……」
ユノの質問に、
チャンミンが答えた。
「一応、被害届けは、
出すそうです。
表向きは、
強盗ということで……
他にも、被害者がいるかもしれないので……」
なるほど……
確かに、財布の金も、
全て盗られた。
「事件現場は、
〇〇地区ですよね。
あそこは、最近、
強盗レイプ事件が、
何件も多発しています。
しかし、被害者は女性が多く、皆、訴えを起こしません。
チョンさんを襲った犯人と同一人物かもしれません。
ぜひ、ご協力ください。
チョンさんの供述内容は、けっして
外には漏らしません。」
たしかに……
女性は、
訴えずらいだろう……
男の自分だって嫌だ。
でも……
これで、あいつらが捕まるなら……
俺みたいな目に合う子を、
独りでも減らせるなら……
「解りました。」
チャンミンは、
ユノが座っていたソファーの左隣に腰かけ、
ユノの右手を握った。
ユノは、あの日のことを、
静かに語り始めた。