苦いチョコレート

東方神起ミンホ。闇小説(ホラー&暴力系)多し。

魔身26

「チャンミン様!!」




最初に、気がついたのは、


チャンミン王の部屋に、

朝の風を通そうと入室してきた女官で‥‥



彼女の悲鳴が城中に響き渡った。



すぐさま医者が呼ばれ、


チャンミン王の手当てをしたが‥‥



チャンミン王の美しいブラウンの瞳は、


無惨に切り裂かれ、


嘆き悲しむ人々の姿を映すことは出来なかった。



だが、


誰も‥‥


王を責める者はいなかった。



皆‥‥チャンミン王の気持ちが、痛い程解ったからだ‥‥




やがて、

チャンミン王は、傷が癒え始めると、


訓練を始めた。



武術や剣術の訓練ではない。



生活をするために必要な訓練だ。



目が見えなくても、


身の回りのこと、


自分のことは全て自分で出来るように、


チャンミン王は訓練をし始めた。


掃除や洗濯はもちろん、


城の厨房にまで赴き、

料理人達に、

煮炊きを教わった。



皆、だんだんと、

チャンミン王が何を望んでいるのかが、


なんとなく解った。



訓練を重ね、

チャンミン王が自活に自信がついた頃‥‥


王は、城の主だった者達を、

玉座の間に呼び寄せた。



「皆の者に告げる。

私は、今日この時をもって退位し、

王座を皇太子に譲こととする。」



集まった人々は、


誰一人騒がず、


皆‥‥やっぱり‥‥と、


王の言葉を静かに受け止め、

涙を流した。




王は、その日のうちに、

城を出る支度をした。




「伯父上、

ここは伯父上の城です。

何かあれば、

いつでもお戻りください。

国民一同、いつでも門を開けてお待ちしています。」




皇太子は、チャンミン王にそう告げて、


涙ながらに王を送り出した。




チャンミン王は、

城の馬屋に行くと、


ブランの元へ行った。



ブランはチャンミン王がユノへ送った、ユノの愛馬だった。



ユノの手紙を持って城まで戻ってきた後は、



城の馬屋でずっと暮らしていた。




「ブラン‥‥」




チャンミン王は、ブランに語りかけた。




「私を‥‥ユノの所に連れて行ってくれ。」




ブランはしばらくチャンミン王を見つめていたが、


やがてチャンミン王の手に鼻面を擦り付けた。




「ありがとう。」




チャンミン王は、ブランに跨がると、



城を出て、


愛しいユノがいる森の奥を目指した。





続く