苦いチョコレート

東方神起ミンホ。闇小説(ホラー&暴力系)多し。

魔身28

「ユノ‥‥」




チャンミン王は、

愛しい人の声がした方に向かって、

一歩踏み出そうとした。




「だ、だめです!!

チャンミン様!!」



ユノの悲鳴のような声が聞こえた。




バタバタと走る足音と、

ドアを勢いよくバタンと閉める音がした。




だが、チャンミン王には、


ドアがどこにあり、


愛しい人が、どこに逃げ込んだのか解らない。



ブランがブヒンと一声鳴いた。




「チャンミン様!

お帰りください!

私の姿を一目でも見たら、

チャンミン様も石になってしまいます!」




ユノは家の中から、

表にいるチャンミン王に向かって叫んだ。




手紙を書いたのに‥‥


魔女に呪いをかけられ、

もう二度と会えない‥‥と‥‥


愛していると‥‥



手紙を書いたのに‥‥




愛しい御方は、どうしてやってきたのだろう‥‥



ブランが届けてくれたはずなのに‥‥



チャンミン様のもとにまで、

届かなかったのだろうか‥‥



どうして、ブランとここに来たんだ‥‥



ユノは混乱した。




石になってしまう。



愛しい御方が石になってしまう。



嫌だ。


それだけは嫌だ。


チャンミン様に、

石になんかなって欲しくない。



石になってしまったチャンミン様など‥‥


見たくない‥‥



嫌だ‥‥


嫌だ‥‥




「チャンミン様!

私は、魔女に呪いをかけられました!

私の姿を見た者は、

皆、石になってしまいます!

城門の‥‥所で‥‥」



ユノは、唇を噛んだ。



自分のせいで、

石になってしまった‥‥城下の人々‥‥



「チャンミン様‥‥お帰りください‥‥

そして、もう‥‥私のことは‥お捨て置きください‥‥‥

もう‥‥

二度と‥‥ここに‥‥来ては‥‥なりません。

二度と‥‥お目にかかることは‥‥叶いません‥‥」




ユノは言いながら、

涙が溢れてきた。




「ユノ‥‥」



ユノが泣いている。


愛しいユノが泣いている。



抱き締めて慰めたいのに‥‥



その涙を止めたいのに‥‥


なのに‥‥


チャンミン王には、

ユノがどこで泣いているのか解らなかった。



ブランがブルル‥‥と鼻を鳴らしながら、


チャンミン王に近づいてきた。



そして、

チャンミン王のマントの裾を噛むと、



こっちだよ‥‥


というように、引っ張った。



チャンミン王は、

ブランに導かれるまま、



今は、ユノ家の家となった、

森の小屋の玄関に立った。



チャンミン王は、玄関の扉に手をかけると、


扉をそっと押した。



扉はキィ~と軽い音をさせ、

開いた。




「ユノ‥‥?」




「チャンミン様!

だめです!

入らないでください!」




ユノは飛び込むようにして、

ベッドの影に隠れた。




「私を見てはなりません!

出て行ってください!

お帰りください!」




「ユノ‥‥大丈夫だ。」




チャンミン王は、落ち着いた声でユノに話しかけた。




「ユノ。

私には、もはや‥‥お前の姿は見えない。

だから‥‥大丈夫だ。」




「え‥‥?」




ユノは驚いた。





続く