苦いチョコレート

東方神起ミンホ。闇小説(ホラー&暴力系)多し。

魔身29

「ユノ。

私には、もはや‥‥お前の姿は見えない。

だから‥‥大丈夫だ。」




「え?」




ユノはチャンミン王の言葉に驚いた。




「ユノ?

どこだ?

すまない。

私には‥‥お前がどこにいるか解らないんだ。」




解らない?



ユノはベットの影から、


そろそろと目の当たりまで顔を出し、


チャンミン王の方を伺った。





チャンミン王は、部屋の真ん中に立っている。



だが、ユノの方を見てはいない。



正面の暖炉の方を向いている。



「チャンミン‥‥様?」




ユノが声をかけると、

チャンミン王はユノの方を向いた。




ユノは、「ひゃっ!」と焦り、

ベッドの影に隠れた。




「ユノ?

どこだ?」




チャンミン王は右手を前に出し、


前を探りながら、

愛しい人の声がした方へ進んだ。




だが‥‥




「あっ‥‥」




チャンミン王は椅子にぶつかり、


床にドサリと転がった。




「チャンミン様!?」




ユノはチャンミン王の声に、

ベッドの影から飛び出してしまい、



床に膝を付いているチャンミン王のそばに、

思わず駆け寄ってしまった。




「チャンミン様‥‥

どうし‥‥」




ユノはチャンミン王の顔を見て息を飲んだ。




目が‥‥




「チャンミン様‥‥

目を‥‥どうされました?」




チャンミン王の目は、

白濁してしまっていて、

視点が定まっていない。


そして、

左右の目の辺り‥‥

横一文字に、

ひどい切り傷がある。




「ユノ‥‥」




チャンミン王は、

ユノの腕を触り、


肩に手をおいた。




「チャンミン様‥‥

その目は‥‥どうされました?

誰が‥‥

誰が‥‥

御身に‥‥このような‥‥」




チャンミン王は、ユノの身体を抱き寄せた。



ああ‥‥ユノの身体だ‥‥


ユノの匂いだ‥‥




「誰でもない‥‥

自分でやったのだ。」




ユノはヒュッと息を飲んだ。



「な‥‥ぜ‥‥?」




「そなたのいない世界など‥‥

私にとっては暗闇の苦界でしかない。

そなたと共にいれぬなら、

光など‥‥無くてもよい。

そなたの存在こそが、

私の光だ。」




「チャンミン様‥‥

まさか‥‥」



ユノはチャンミン王の言葉が理解できず、混乱した。




「そなたを見ると石になってしまうのなら、

姿は見えなくともかまわない。

体温を感じ、

匂いを感じ、

声が聞ければそれでいい。

そなたを側に感じていたい。」




「そんな‥‥

そんなそんな‥‥」



ユノの顔色が、

雪のように蒼白になった。



「ユノ‥‥

愛しい人‥‥

愛している。

私と共にいてくれ‥‥」




ユノは、空気を切り裂く悲鳴のような声をあげ泣き崩れた。




チャンミン王は、

愛しい人が泣き止むまで、

いつまでも抱きしめていた。





続く