苦いチョコレート

東方神起ミンホ。闇小説(ホラー&暴力系)多し。

狂気と愛の境目24

ユノは、急いでキッチンを片付けると、


財布を取りに行った。




「あった。」




『ソウル警察

犯罪一課


イ・スヒョク刑事』




以前、事情聴取に来た刑事が、


置いていった名刺だ。


財布の中に、

ずっと、入れっぱなしにしていた。




「この人なら、

とりあえず、

犯人がつかまったかどうか、

解るよな。」



ユノは、さっそく、

電話しようとしたが、


よく、見ると、

名刺には、

電話番号も何も書いてない。



「変な名刺だな?」



仕方なく、

ネットで、

ソウル警察の電話番号を調べて、かけてみた。




「はい。

ソウル警察署です。」



受け付けらしい男性が電話に出た。




「あの……

チョン…といいます。

犯罪一課のイ・スヒョク刑事をお願いします。」



「イ・スヒョクですか?」



「はい。」



「少々お待ちください。」



電話口から、

音楽が流れた。



「お待たせしました。

犯罪一課に、

イ・スヒョクという名の刑事は、

おりません。」




「……え!?」




どういうことだろう?



辞めたのか?



「退職……されたのです

か?」




「いえ……」



電話のむこうで、

男性がパソコンを捜査する音がする。



「5年前まで、遡りましたが、

ソウル警察署に、

イ・スヒョクという名の人物が在籍した記録は、

ありません。

もっと前ですか?」




「っ!?

そんなはずありません!

だって……

4ヶ月前に、

家に来て……事情聴取って……

俺と話ました。

名刺も貰いました。」




「………なんの事件ですか?」




「強盗事件です。」




「場所は、どこですか?」




「〇〇地区です。」




また、パソコンを捜査する音がする。




「少々お待ちください。」




「あ………」




電話が音楽に切り替わった。




「はい。

代わりました。

犯罪一課の、

ソン・ガンホです。

強盗事件で事情聴取されたんですか?」



「はい。」



「事件の起きた日は、

解りますか?」



「………〇月〇日です。」



忘れもしない……



「場所は?」



「〇〇地区の〇〇通りです。」




また、パソコンを捜査する音がする。



「チョンさん。

〇月〇日も、

その次の日も、

〇〇地区で強盗事件の通報はありません。」



「っ!?」




「婦女暴行と、

食い逃げと、

万引き、

喧嘩が4件。

交通事故が2件。

あと火事が1件。

ひょっとして彼女が被害者ですか?

婦女暴行の件?」



「ち、違います。」



「刑事に、

事情聴取されたんですよね?

名刺をお持ちとか?」




「はい。」



「こちらに、その名刺を持ってきてくだされば、

本物かどうか調べますよ。」




「ほ、本物?

偽物かもしれないってことですか?」



「それは、解りません。

とりあえず、

名刺を持ってお越しください。」




「わか…りました。」




ユノは、電話を切り、

呆然とした。