苦いチョコレート

東方神起ミンホ。闇小説(ホラー&暴力系)多し。

狂気と愛の境目25

ユノは矢も盾もたまらず、


急いで支度すると、

ソウル警察に向かった。



帽子を目深に被り、

縁の太い伊達メガネをかけ、


体型を隠すような、

わざとダサい服装を選んだ。



ソウル警察の駐車場の、

目立たない場所に、 

車を止め、

急いで建物の中に入った。



入り口付近の受け付けにいた、

初老の男に、

声をかけた。



「あの……チョンといいます。

犯罪一課のソン・ガンホさんを、

お願いします。」



「チョンさんですね。

チョン何さん?

ソン刑事に何のご用ですか?」




「チョン……ユンホです。

ソンさんに、名刺を持って来るように言われました。」



「少々お待ちください。」



幸い、受け付けの男は、


ユノが芸能人とは、

気がつかないみたいだった。



柱の影に隠れ、

しばらく待っていると、



「チョンさん?」



と、男に声をかけられた。



「は、はい。」



「ソン・ガンホです。

名刺を持ってきたの?

見せて。」



ユノは、

ソン・ガンホ刑事に、

名刺を見せた。



ソン刑事は、一目見ただけで、




「ああ、こりゃ偽物だ。」




と呟くと、


名刺をユノに返した。




「偽物なんですか?

ほんとですか?」



ソン刑事は、

上着のポケットから、

自分の財布を出すと、


名刺を一枚抜き取り、


ユノに見せた。



「これが本物です。

ほら、ここに、ソウル警察のロゴが浮き出てるでしょ?

それには、これが無い。」




「それ……」と、

ソン刑事は、

ユノの手の中にある名刺を指差した。




「そんな……」




「大方、我々の名をかたったニセ刑事でしょう。

事情聴取されたって?

どんな事件?

あんたが、被害者なの?」



ユノは、

頭が混乱してしまい、

答えられなかった。



「待てよ……

あんた……どっかで見たな。

そうだよ。

あんた芸能人だろ?

東方なんとかいう……」



「し、失礼します。

ありがとうございました。」




ユノは、あわてて、

その場を離れた。



後ろの方で、ソン刑事が、


「おい!待てよ!」


と、声をかけたが、

無視して建物から飛び出した。