苦いチョコレート

東方神起ミンホ。闇小説(ホラー&暴力系)多し。

魔身7

やがて、3人は少し開けた場所に出た。



そこには、

古い丸太小屋が建っていた。



丸太小屋は、

全体がすすけたように真っ黒で、


所々コケが生え、


壁には、何匹もの蛇や百足が這っていた。



煙突からはモクモクと黒い煙が出ていて、


何かの肉が焼ける、異様な臭いが漂っていた。



「うっ‥‥」



ユノもディンディンも、

その腐臭のような臭いに、

思わず鼻を押さえた。



「ここが私の家よ。

おにいさん、ありがとう。」




少女は、馬からヒラリと飛び降りた。



その様子は、

先ほどまでの足の痛みに泣いていた憐れな様子とは、

まるで違った。




「お礼がしたいわ。

おにいさん、家に来て。」




「いや、私は‥‥

うわ!!」




ユノは、少女の誘いを断ろうとしたが、


少女に、無理やり馬から引きずり下ろされた。



ユノを、

馬上から引きずり下ろしたその力は、


とても可憐な少女の力とは、

思えなかった。



ここにきて、やっと‥‥


ユノは、少女の様子がおかしいことに気がついた。



「おにいさん、とても綺麗ね。

私、気に入ったわ。

お礼がしたいの‥‥来て‥‥」



少女は、妖艶に微笑むと、

豊満な胸を押し付けてきた。



おかしい‥‥


少女は、こんなに真っ赤な唇をしていただろうか‥‥



こんなに、豊満な身体つきをしていただろうか‥‥



こんなに、朱い、長い爪をしていただろうか‥‥



まるで、年頃の娘のようだ。


男を惑わそうとしている商売女ように、

白い身体をくねらせ、

ユノに押し付けている。



おかしい‥‥


おかしい‥‥



ユノは、抱きついてきた少女の両肩を押し返すと、


慌てて、少女から離れた。




「い、いや。

申し訳ないが、

これで失礼する。

先を急ぐので‥‥」




ユノは、急いで馬に乗ろうとした。




「あらダメよ。」



少女は‥‥

いや、少女だった女は、


馬に股がろうとしていたユノの片足を引っ張ると、

地面に引き倒した。




「うわ!!」




そして、地面に倒れこんだユノの髪の毛を掴むと、



ユノを仰向けにし、

髪の毛だけをつかんだまま、

ズルズルと丸太小屋の方まで、引きずりはじめた。




「うふふ‥‥

逃げようとしてもダメよ。私は、あなたが気に入ったの。

あなたのその綺麗な顔が大好きよ。」



女の笑顔は、

すでに人間のものではなく、

美しく、禍々しい魔女の笑みだった。




「は、離せ!!」



ユノは、全身の力を振り絞りもがいたが、

魔女の力は凄まじく、


ゆっくりと丸太小屋の方へ引っ張られて行った。




「大丈夫よ。

あなたを、うんと気持ちよくさせてあげるわ。

その代わり、

その黒曜石のような美しい目玉を、私にちょうだい。

ちょうど新しいネックレスが、欲しかったの。」




魔女は、ケラケラと笑った。




「ディンディン!

助けてくれ!!

ディンディン!!」



ディンディンは、

まるで呪いをかけられたかのように、

馬上で硬直していた。




しかし、ユノが声をかけた瞬間、

目が覚めたように動きだし、


馬から飛び降りると、

「ウォー」と、

叫び声をあげながら、

魔女に向かって突進し、

剣を振り上げた。



魔女は、振り向きざま、

ディンディンに向かって手をかざすと、


呪いの呪文を叫んだ。




すると、次の瞬間、


ディンディンの身体は黒い塵のように消え失せ、


代わりに一羽のカラスが飛び立った。





続く