苦いチョコレート

東方神起ミンホ。闇小説(ホラー&暴力系)多し。

魔身8

「ディンディン!!」



ユノは、カラスになったディンディンを見て、

絶叫した。



カラスは、そのまま飛び立ってしまった。



が、ディンディンは、

カラスになる瞬間、


手にしていた剣を、

ユノのほうに向かって投げた。



ユノの身体の上に、

ディンディンが投げた剣が落ちた。




ユノは、剣をしっかりとつかんだ。


空を見上げ、ディンディンを見送っていた魔女は、


ユノが剣を手にしたのに、

気がつかなかった。




「さあ‥‥邪魔者はいなくなったわ。

ゆっくり楽しみましょう。」




魔女は、

再びユノを引きずり始めた。



ユノは、髪の毛を引きちぎられる痛みに耐え、


髪の毛を掴んでいる魔女の手めがけて、


剣をふりかざした。




ザシュッと、

鈍い音がして、


魔女の腕が切り落とされた。



「ギャーーー!!」




魔女は、右腕から血飛沫をあげ、

もんどりうった。



ユノは、

切り落とされてもなお、

ユノの髪の毛を掴んでいる魔女の右手を、


髪の毛ごと切り落とした。




「お、おのれ‥‥

私の右手を‥‥

おのれ‥‥

おのれ~~!!」




魔女は、切り落とされた右手からドクドクと、

血を流しながら、

ユノにつかみかかろうとした。



その形相は、すでにこの世の者ではなく、

地獄から這い出した悪鬼のようだった。



ユノは、すかさず、

伸ばされた魔女の左腕も切り落とした。




「ギィヤーーー!!」




魔女の凄まじい絶叫が、

森の中に響いた。



両手を切り落とされた魔女は、

これでもう、

呪いの印を放てない。




「く‥そぅ~

おのれ‥‥

おのれ‥‥

おのれ~~~」




ついに魔女は地面に膝をついた。




魔女の両腕からは、

魔女の力の源である、腐った血が、


ドクドクと流れ続けている。




「ディンディンをもとに戻せ!!」




ユノは、魔女に近づくと、

魔女の胸に剣を突きつけた。




下を向いていた魔女は、

「ふふふ‥‥」と、不気味に笑った。




「あの者は、もう‥‥

生涯、人には戻れぬ。

お前が、私の腕を切り落としてしまったからな‥‥

もう、召還の印が放てぬ。」




魔女は、「アハハハハ‥‥」と、

愉快そうに笑った。




「そんな‥‥」




「せっかくだから‥‥

お前にも、

贈り物をやろう。」



魔女は真っ赤な口を開け、

ニヤリと笑った。




「そなたは美しい。

さぞや、多くの人間が、

そなたに心を奪われ、

報われぬ恋に身を焦がすだろう。

私のように、そなたにつれなく袖にされ、

悲しみの涙を流すだろう。」




魔女は、ケラケラ笑いながら、

血の涙を流した。




「だから‥‥

もう、そなたに恋をする憐れな人間が増えぬよう、

私が呪いをかけてやろう‥‥」




魔女は、顔をあげると、

血のように真っ赤になった目で、

ユノを見据えた。




「よ‥‥よせ‥‥」




危険を感じたユノは、

急いで下がると、

馬に飛び乗った。




「逃げても無駄だ。

私の呪いの言葉は、

風に乗り、

どこまでも、そなたを追いかけるだろう。」




ユノは、馬の腹を蹴り、

全速力で魔女から離れた。




「そうだな‥‥

そなたのその美しい姿に、

特別な力をやろう。」




魔女は、遠ざかるユノの背中に向かって、

声を張り上げた。




「そなたの姿を一目見たものは、

皆、石になる。

前からだろうが

後ろからだろうが、

横からだろうが、

そなたの姿を一目見ただなけで、

人間は、皆、たちどころに石になるのだ。

自害も叶わぬ。

そなたの遺体を見た者も、

皆、石になる。

腐り果て、骨になっても尚、

そなたを見た人間は、

皆、石になるのだ。

石になった愛しい人々に囲まれ、

生涯孤独に苦しみ、

呪われるかよい!!」




馬の背に乗り、全速力で駆けるユノの背後から、


魔女の黒い風が追いかけてきた。


やがてそれは、

馬もろとも、

ユノを飲みこんだ。



「チャンミン様!!」



ユノは、黒い風に飲みこまれ、

意識を失う瞬間、

愛しい王の名を呼んだが、



その声は、

魔女の呪いにかき消され、


チャンミン王には、

届かなかった。








続く