苦いチョコレート

東方神起ミンホ。闇小説(ホラー&暴力系)多し。

魔身11

ユノは、愛馬を駆り、

森の中に逃げ込んだ。



魔女に、遭遇した方向とは、

逆へ逆へと向かった。



薄暗い森の奥深くに入り、

ようやくブランの手綱を引き、

足を止めた。



辺りには、もちろん、

誰もいない。



ユノは、ブランから降りると、

地面にドサリと腰を下ろした。



落ちついて、

呼吸を整えると、


先ほどの城門での光景が、

まざまざと脳裏に甦った。



石になってしまった人々は、皆、

ユノの知り合いだ。



城下で生活を営んでいた、

大切な民だ。


愛しいチャンミン王の、

大切な民だ。


あの民達を幸せにするために、

チャンミン王と力を合わせ、

頑張ってきた。



鍛冶職人。


八百屋。


牛乳屋。


パン屋。


弁当屋。


花屋。


皆、朝早くから働いていた人々ばかりだ。



花屋の女主人は、

小さな娘を抱えていた。



その娘まで、

石になってしまった。



ユノが名付け親になってあげた、

かわいい女の子だった。



「うっ‥‥‥」



ユノは、泣いた。



膝を抱え、

顔を伏せ‥‥泣いた。



ブルルルル‥‥



ブランが、そんな主人を気づかって、

その白い鼻面を、

ユノの頰に擦り付けた。



どのくらいそうしていただろうか‥‥



チチチチチ‥‥と、

すくそばで鳥の声がし、


ユノは顔をあげた。




「え‥‥?」



目の前の光景に、

ユノは、驚いた。



すぐ前の草むらには、

大小様々なたくさんの鳥達がいて、

ユノの方を見ていた。



鳥達のすぐ後ろには、

兎、鹿、猪、ネズミなどがいて、

やはり、ユノの方を見て、様子をうかがっているようだ。



「おまえたち‥‥

どうして‥‥」




と、そこへ、

一羽の大きなカラスが舞い降りてきた。



カラスは空を旋回すると、


ユノの目の前に降りてきた。



そして、ひょこひょこと、

歩いてユノのそばまで近づいてくると、


ユノの膝の上に、

ピョンと、飛び乗った。




「ディンディン?」




ユノがカラスに呼び掛けると、

カラスは嬉しそうに、

ユノの膝に、何度も頭を擦り付けた。




「ディンディン‥‥

すまない。

ディンディン‥‥」



ユノは、カラスになってしまったディンディンの背中を撫でた。



泣きながら、

いつまでも、

いつまでも、

撫でていた。



森の動物達は、

そんなユノの様子を、

じっと見ていた。





続く