苦いチョコレート

東方神起ミンホ。闇小説(ホラー&暴力系)多し。

魔身12

「ディンディン‥‥

俺‥‥これから‥‥

どうしたらいいんだろうか‥‥」



ユノは、ディンディンの背中を撫でながら、

つぶやいた。



魔女は、

『ユノを見た人間は、

全て石になる。』

と言った。



それは、文字どおり、

ほんとに人間だけで、


どうやら、

鳥や動物達は平気らしい。



だが、

ユノは、もう二度と人間には会えない。



愛しいチャンミン王に会うことは、

もう、叶わない。



「最後に一目‥‥お会いしたかったな‥‥」



いや、もし、会っていたら‥‥


チャンミン王は、

今頃、石になっていた。




これでよかったのだ。




ユノは、もう二度と会えない愛しい人を想い、


また、さめざめと泣いた。




どうしたらいいんだろうか‥‥



自害しようか‥‥



しかし、魔女は、

ユノが骨の欠片になろうとも、


それを見た者は、石になると言った。



下手に自害もできない。



深い深い穴を掘り、

穴の底で、

胸を突いて自害しようか‥‥



そうすれば、

誰にもユノの遺体を見られずに済む。



そのうち、

土が崩れ、

落ち葉が積もり、


ユノの遺体を隠してくれるだろう。



そうだ。


そうしよう‥‥



何か、土を掘るものを、

探そう。



辺りは、

段々と陽が傾いてきた。



「急がないと‥‥」



ユノが立ち上がると、


動物達がワラワラと、

ユノの周りに集まってきた。




「?

お前達‥‥

どうした?」




すると‥‥

一番身体の大きい鹿と、


二番目に身体の大きい鹿が、


ユノのマントの裾を、

左右から噛んだ。



そのまま、

ユノをずるずると引っ張っていこうとする。



「え?

何?

ちょ‥‥?」



鹿の動きに合わせ、


猪の中で一番身体の大きいものが、


ユノの背後から、

ユノを押した。




「え?

うわ?

ちょっと待て!」




ユノは、鹿に引っ張られ、

猪に押されながら、



森の中を、

さらに奥へ奥へと進んでいった。




「おいおい‥‥

どこへ行くんだ?」



ユノは、振り返った。


ブランも大人しく、

ユノのあとを付いてくる。



背中には、

ディンディンが乗っている。



ユノとブランの周りを取り囲むようにして、


森の大小様々な動物達が、

付いてくる。



しばらく進むと、

夕焼けにオレンジ色に染まった森の中に、


一件の丸太小屋が見えてきた。



魔女の小屋とは違う。



禍々しい気は、

微塵も感じられない。



だが、古い。



あちこち苔むしている。



誰も住んでいないのか



灯りはついていない。



真っ暗だ。



鹿と猪が、

ユノから離れた。



ユノは、動物達を振り返った。



「ひょっとして‥‥

ここに入れって‥‥言ってる?」




動物達は、じっとユノを見ているだけだが、


なんとなく、


『YES』と言っているような気がする。




ユノは、恐る恐る小屋の扉を開き、

中に入った。






続く